“発酵せずにはいられなかった” WANDERLUSTな輪が広がった「おいしそうなハイライフ八ヶ岳2022」来年も、再来年も“会いたい人”が集う場所へ

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“発酵せずにはいられなかった”
WANDERLUSTな輪が広がった「おいしそうなハイライフ八ヶ岳2022」
来年も、再来年も“会いたい人”が集う場所へ

9.10(土)11(日)に開催されたハイライフ八ヶ岳2022 powered by ソラリズム。2日間で延べ1,200人ものみなさんに集まっていただき、新しいハイライフの幕開けを分かち合うことができました。
starRo、Ryu Matsuyama、ermhoi with The attention please、GREEN ASSASSIN DOLLAR、鬼の右腕等が出演した1日目。また2日目にはハナレグミ×U-zhaanのコラボユニット「タカシタブラカシ」を大トリに、石橋英子、OMSB、一十三十一、Ovall等が出演。2日間で総勢34組のアーティストたちが素晴らしい演奏を響かせました。

「発酵サーカス」を中心とするマーケットエリアには、ワインやクラフトビールに加え、味噌汁、ビリヤニ、カレー、パン、コーヒー等の出店が大集合。発酵にまつわる貴重なトークや演奏に耳を傾けながら、おいしいご飯を頬張るみなさんの姿がありました。

逆境からのスタートとなったハイライフ八ヶ岳2022。その開催に至るまでの日々に触れながら、「WANDERLUST」なみなさんの和やかな笑顔と発酵の輪が広がったな「おいしそう」な2日間を振り返りたいと思います。

ゼロからイチを作る。新しいハイライフの開拓

思い返せば会場変更という窮地に立たされ“まっさらからのスタート”となった本開催。その形を模索しながら見出した「WANDERLUST  “世界を探求したい”という強い欲望」という新しいテーマの元、「実験」「開拓」そして「発酵」というアイデンティティを手に入れることができました。

“開拓者”精神で様々なカルチャーや価値観を受け入れ、変化し続ける八ヶ岳に開かれた音楽フェスを。

今となっては少し懐かしくも感じるハイライフ八ヶ岳実行委員長の三上浩太と、クリエイティブディレクター宮沢喬の対談記事。まだ「WANDERLUST 」というテーマも見つけられておらず、「ゼロからイチをつくる」という大役を担った二人の率直な想いと決心が語られています。

「アーティストのライブだけ見て帰る」って流れにしたくないんだよね。観光とセットで考えているというか、ハイライフがこの地域の素晴らしい「もの」や「人」とつながるきっかけになって欲しい。

二人のこの言葉が、いわばハイライフ八ヶ岳2022の「根っこ」。ここから「発酵サーカス」をはじめとする新しいハイライフの芽が顔を出し始めました。

文化とは、場所や時代などの広い意味での自然から必然的に生まれる『発酵食品』のようなもの

ハイライフが「発酵」という新しいアイデンティティと出会うきっかけをくれたのが、今回の出演者であるstarRoの存在でした。発酵という自然現象に、人や外部から“手が加えられる”ことで発酵食品が出来上がり、誰かと美味しさや驚きを共有し合うことができる。「starRoと回る、山梨発酵ツアー」を通し、発酵サーカスというコンテンツに明確な必然性と意味を実感することができました。

必要性を帯びて自然発生的に生まれるのが文化の本質
(中略)
自分が必要だと思うことは、誰かにとっても必要で、その連鎖で少しずつ大きくなっていく。そういった自然発生的なできごとの副産物として、文化と呼ばれるムーブメントやコミュニティができていく。フェスティバルだってそうだよね。

starRoと考える音楽と発酵の関係性。自然発生するムーブメントの力強さ

「コロナ禍」や「会場の変更」それらの逆境は“必然性”があったのかもしれない、そんな解釈にまで至ってしまうのは少し大袈裟でしょうか。6年目となるハイライフは発酵期を迎え、新たな文化とムーブメントの必要性をプツプツと私たちに知らせてくれていたのかもしれません。結果論といえばそれまでですが、本開催で作り上げた「発酵サーカス」は逆境がなければ出会うことができなかったかもしれない大切なコミュニティ。
今回そんな「発酵サーカス」をプロデュースしてくれたのは、甲府市で創業150年の味噌屋「五味醤油」の六代目である五味仁さん。開催を終えて素敵なコメントをいただきました。ぜひ読んでください。

イベント前に取材兼ねて行った「98WINEs」は素晴らしかった。ここでしかできない葡萄で発酵させてワインを作る、「作ってる場所に体感しに来てもらう」を大事にしてるワイナリー。
帰りに道でstarRoさんが言っていた『呼吸する様に出来ることが僕は音楽だったんだよね』というパンチラインすぎる一言に、さて僕のそれは(呼吸する様に出来ること)何なんだろうと良い問いをもらえました。

イベントを終了してみて。

発酵って食べるとか環境だけのことじゃなくて、考え的とか概念とか雰囲気の意味で使える言葉じゃないんだろうか。自発的に「演奏するよ」って言ってくれた勝井さん。演奏の前で伸びてる(ストレッチしてる)starRoさん。にこやかに出店してくれた飲食の方々。音楽フェスなのに、真剣に話しを聞いてくれたお客さん。甘いブドウ果汁に酵母が寄ってきてぷくぷく発酵してるようでした。今までのハイライフに無い実験的要素はあったけど、だいぶ僕ららしい感じのエリアになった。

10年以上前から発酵発酵って言ってきて。ここ最近よかったと思う事が多い。発酵サーカスもその一つです。ありがとう。

来年も、再来年も“会いたい人”が集う場所

「久しぶり!」「元気にしてた?」そんな言葉がたくさん聞こえてきた今年のハイライフ。新しいブッキングチームも立ち上がり、「発酵サーカス」では五味仁さん等も中心となって、アーティストやトーク出演者、出店者の皆さんに至るまで、“いま、気になる店・会いたい人”をブッキングをさせていただきました。

「ここに来ればまたみんなに会えるというのも、僕がハイライフに参加する理由の一つなんです。」

演奏後のトークでそう語った勝井祐二さんも、これまでハイライフに出演し続けてくださっている会いたい人の一人。出演、出店者である以前に、皆さんはそれぞれ一人の「会いたい人」なんです。

フェスの醍醐味である「新しい発見」に加え、このハイライフが皆さんの「再会の場」となることもわたしたちが目指していくフェスティバルの形でもあります。「開かれた内輪ノリ」という隠れたキーワードも生まれた本開催。運営スタッフたちも美味しいご飯と素晴らしい音楽、そして会いたかった皆さんとの時間を楽しんでいたのがとても印象的でした。

「わたしたち」に必要だったハイライフ

必要性を帯びて自然発生的に生まれるのが文化の本質であるならば、今の社会で言われいてる『文化』『カルチャー』って本質とずれているんじゃないだろうか。
(中略)
経済的・社会的利益のために、無理矢理つくって、デフォルメされてしまったカッコつきの『文化』ばかり増えてないだろうか

starRoの言葉を受けて考えてきたきたことは、ハイライフの「必然性」「必要性」でした。「絶景」というアイデンティティを失った逆境の中、「ここでやる意味」「ハイライフの魅力」それを繰り返し考え続けたわたしたちは、一つの答えを見出しました。

「地域は人」

「絶景」はあくまでも環境のポテンシャルで、地域を魅力的に彩っているのはそこに集う「人」なのでは。であれば「地域の魅力」とはこの地に暮らすわたしたち一人ひとりであり、そこから広がるコミュニティそのものなのではないか。

その答えに辿り着いてからハイライフは一気に加速していきました。「こんな人がいる」「面白いお店がある」そんなアイディアが溢れ出し、「発酵サーカス」を中心にやりたいことが次々と形になっていく。
面白い人たちが集まることで自然と湧き出す“探究心”、まさに「WANDERLUST」な欲求が必然的に育まれていく営みに一切の「無理矢理」はなかった。それと同時に6年目を迎えたハイライフが、わたしたちにとって必要な一つの「文化」となっている強い実感がありました。

WANDERLUSTな人々が集う「おいしそう」なハイライフでありたい

SNS上には「今年のハイライフ何か面白そう!」といったみなさんの声が多く見かけられました。「絶景の音楽フェス」「コロナ禍でも楽しめる野外フェス」これまでハイライフは様々な「目指す形」をみなさんに投げかけてきましたが、今年のハイライフはまさに「おいしそう」なフェスティバルだったんじゃないでしょうか。

「目指すもの」なんて正直明確じゃないけれど、決め打ちせずに柔軟に色々なものを巻き込んで、新しいものを作っていくことがハイライフの目指すべき営みなんじゃないかな。

クリエイティブディレクター宮沢喬は開催前にこう語っていました。例年のように明確な「目指すもの」が無くとも、柔軟なコミュニケーションを通して自然と生まれたアイディアと“探究心”で作り上げたハイライフ八ヶ岳2022。
嬉しいことに、そんな「おいしそう」な匂いを嗅ぎつけたみなさんが会場に集まり、“WANDERLUST”という旗の元、演者、スタッフ、お客さんの垣根を超えた一つのコミュニティの営みを分かち合うことができた。これはわたしたちにとって大きな収穫であり、一つの指標となりました。

来年に向けて「おいしそう」な企みがプツプツと醸され始めています。ぜひまた嗅ぎつけて、足を運んでください。「柔軟に色々なものを巻き込んで、新しいものを作っていく」ハイライフの姿を見に来てください。またここ八ヶ岳でWANDERLUSTな皆さんと会えること、新しい文化を分かち合えることを、心から楽しみにしています。

Photo by 丹澤由棋/平林岳志/古厩志帆/他