【インタビュー】オオヤユウスケ(Polaris) × 勝井祐二(ROVO)|ハイライフに集う理由と新しい生きるカタチ

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【インタビュー】
オオヤユウスケ(Polaris)×勝井祐二(ROVO)|ハイライフに集う理由と新しい生きるカタチ

インタビュー&構成■野呂瀬亮 photo■平林岳志

9月11日(土)配信を終えた「ハイライフ八ヶ岳」(以下HL)の会場には、それまでの緊張感や熱気から開放された心地よい空気が流れていました。ただその中に入り混じる、切なげで静かに脈打つような残り香。今日一日を締めくくったオオヤユウスケ×勝井祐二の演奏の残響が未だ会場に漂っているように感じられます。

今回演奏を終えたばかりの二人に時間をいただき、二人とも馴染みのあるearth gardenスタッフ葛原氏を交えて、今年のHLの印象や、今日に至るまで想いを聞かせてもらいました。

 

■ ハイライフ八ヶ岳との再会 

-先程の演奏素晴らしかったです。会場入りしてから今日一日どんな印象がありますか?

勝井祐二(以下勝井) 今日はオオヤ君と一緒に車で来たんですけど、中央道で向かってくると小淵沢手前で急こう配になるポイントがあって。「この上り坂きた!」って思ったよね(笑)

オオヤユウスケ(以下オオヤ) そんな話してましたね(笑)

勝井 そこから小淵沢ICで降りて会場に来た時「HLきたなー」とほっとしましたよね。“馴染みのメンバー”に会えて「ああよかった」って。

オオヤ 演者というより、同じ場を共有しているスタッフのような気持ちになっているんです。だから八ヶ岳で皆さんと再会できたのが嬉しかった。

-お二人ともこのHLは皆勤賞と言ってましたね。

オオヤ 初開催から参加してますね。むしろハイライフ前身のNatural High!をはじめearth garden主催のイベントは以前から度々出ています。

-earth gardenとの出会いや、今のような関係になっていく経緯はどんなものだったんですか?

オオヤ 僕は15年ぐらい前に東京の稲城市に住んでいた時ですね。当時家の近くの里山が70年代くらいから続く多摩丘陵の宅地開発の対象だということを知って、地元の仲間と里山の大切さを呼びかける活動をしていたんです。そこで南兵衛さんと知り合って、色々と協力をしてくれて。

-里山の開発問題がきっかけなんですね。

オオヤ 音楽の繋がり以前から深い関係性がありましたね。もはやミュージシャンと主催者っていう関係を超えているのかもしれません。

しかも当時東京千駄木にある父親の実家近くに偶然南兵衛さんが住んでて。「大谷って表札見たことありますよ!!」みたいな話になったりして(笑)

 

-すごい偶然ですね(笑)。勝井さんはいかがでしょう。

勝井 多分僕が初めてFUJI ROCKに出た2000年には出会っているはずなんですけど。

-ここ最近のようなご関係になったのは?

勝井 特に去年からですね。コロナ禍でずっと家に籠っていた時に、南兵衛さんから「いいキャンプ場があるんで見に来ませんか?」って電話が来て。不思議な誘いだなと恐る恐る行ったら、マスクを一切つけていない南兵衛さんが笑顔で立ってたんです(笑)。それが今のライブフォレストを開催している会場だったんです。

一同 (笑)

勝井 そこからライブフォレストやROVOのライブなど、去年から今までearth gardenと試行錯誤を繰り返してきました。日々状況が変化する中「丁寧な対応」をしていく事の重要さを教えられる期間でしたね。

-コロナ禍になって以降earth gardenの動きには強い信念が感じられますよね。

勝井 その時その時で対応は変わるけれど、基本的な“考え方”は今日まで地続きで繋がっているんです。この先に何が繋げていけるのか、それを都度考えるっていう。

 

■ またここで会えるということ

-今日演奏をされてどんな感情や印象がありますか?

オオヤ ライブがはじまった以上演者として「やるべきこと」に徹しました。あと凄く素敵な会場だったので“ここだからこそできる演奏”を心がけましたね。いつもと違う場だからこそ、自然と新しいものを作ろうという気持ちになりました。

 

-「やるべきこと」をやるというお話は以前もされていましたよね?

葛原 HLとNatural High!を同年に開催した際のインタビューで、今でも「フェスってこうあるべきだよね」と二人から教えてもらったことがあるんです。

以下引用ーーー
【インタビュー】オオヤユウスケ(Polaris)×勝井祐二|色とりどりの緑に囲まれた森のフェスと標高1,600mで行われる空のフェス

http://www.earth-garden.jp/festival/59437/

___勝井 野外フェスには豊かな自然が欠かせません。でも、会場を特別にするのはみんなのフェスを作ろうとする意志だと思います。スタッフさんが準備をして、お客さんが集まる。みんながフェスを作って楽しもうとする意思を持ち寄るから、そこにしか生まれないグルーヴがある。

___オオヤ 人が集まることに意味がありますよね。ライブを見たり、お客さん同士で話をしたり、トークを聞いたり。キャンプをして、料理を作って。

___勝井 それぞれがやれることを持ち寄って参加するという感覚はありますよね。我々はたまたま音楽ができるというだけで、もしかしたらお客さんと変わらないのかもしれない。

___オオヤ×勝井 そうそう、そういうことなんだよね。

ーーー引用ここまで

 

勝井 皆がそれぞれ一番得意なことを持ち寄って作っていく。それが“フェス”の一番いいカタチだし醍醐味だと思うんです。

-参加する演者やスタッフも“ここで集まる”ことを大切にしているんですね。

オオヤ 延期から代替えイベントの話を聞いた時、詳細が決まっていないのに参加することだけは即決していました。もうHLは自分の生きるサイクルに組み込まれているというか。ただ渋谷でやるかもみたいな話が出た時は「いや渋谷はないでしょ!」ってなりましたけど(笑)

勝井 年末のレコーディング以来久しぶりにermhoiさんとも再会して、HLがそういう場所としても機能してくれているのが嬉しかったですね。

オオヤ Michael Kanekoさんだって以前はよく一緒になっていたんですけど、こういう機会がなければなかなか会えなかっただろうな。

 

■ 「オオヤユウスケ×勝井祐二」の始まり

-今回のような二人編成で演奏するのは初めてですか?

勝井 去年11月ライブフォレストのオファーを受けた時に「オオヤ君と二人でやりたい」とお願いをしたんです。実際“二人だけ”でやるのはあれが初めてだったかな。

オオヤ 今まで度々一緒に演奏させてもらったことはあったんですけど、“二人だけ”はそれが初めてだったと思います。

勝井 あの時はセッティングが早く済んだので「10分早く始めてもいいですか?」ってわがままいったんですよ(笑)。それがゆっくり演奏できて凄く良かったんです。川沿いのステージで雰囲気も良くて。

-二人のお付き合い自体は長いんですか?

勝井 凄く密度が濃くなったのはここ1.2年だよね?ちょこちょこ共演はしてたけど。

オオヤ そうですね。ミュージシャンという形では僕は前からROVOのファンでライブ行ったりしてたんですよ。そこからFUJI-ROCKにソロ出演する時に共演のお願いをさせてもらったりしてて。

勝井 今オオヤ君に初めて会った時のこと思い出した。2003年ぐらいに赤坂BLITZのイベントでクラムボンのゲストで出演したことがあって。確かその時Polarisも出ていて。

オオヤ そうでしたね!でも本当に今のように色々なものを共有させてもうらうようになったのはライブフォレストもだけどHLがきっかけだったんですよね。

勝井 HL終わってからの打ち上げで、スタッフも一緒になって色んな話したりね(笑)

オオヤ  あれ楽しかったですよね(笑)。

 

■ “丁寧さ”と“肌感覚”、これからのフェスのカタチ

勝井 コロナについても色々な考え方の人がいて。「今度一緒にやりませんか」ってメールだけだと、その温度感やニュアンスを伝えるのは難しいんです。だからオオヤ君とは直接電話で話すようになった。コロナのことに限らず。

オオヤ アーティストによって考え方や温度感も違う中で、勝井さんとは近い「肌感覚」を感じたんです。丁寧に準備をした上でライブ活動はしていきたいという方針も合致して。そこから今週2DAYSのイベントを組んで今日のHLに臨んでいて。そういう「肌感覚」ってスタッフやお客さんも含め凄く重要な部分だと思うんです。

勝井 今色んなシチュエーションでより「丁寧な」対話をすることが求められると思います。
ROVOでもFUJI-ROCKの出演を決めるのに「配信が苦手」という考えのメンバーもいて。25年一緒にやっているバンドのメンバーですら初めて知る一面もある訳ですからね。

オオヤ そういうコミュニケーションがなければ今日のHLのようなイベントは作れないと思います。
それが今後あらゆる場面で大切になっていくんだと思います。「いいじゃんいいじゃん」で進めていいことは無くなっていく。

勝井 そういうことがこれから試されていくんだろうね。

-このHLはその象徴的なイベントなのかもしれませんね。本日はありがとうございました。また来年八ヶ岳で二人の演奏を聴けるのを楽しみにしています!

 

■ インタビューを終えて

話を聞いてまず驚いたのは二人の“丁寧さ”でした。演者でいながら「ただ役割が違うだけ」と、肩ひじ張らずに話をする二人。そんな等身大な姿勢を体現しているのが二人の演奏であり、その場の空気との丁寧な対話から今日の優しく寄り添うような音が生まれるのだと感じました。

先程引用した葛原氏執筆の対談記事の中で、もうひとつ紹介したい箇所があります。

以下引用ーーー
【インタビュー】オオヤユウスケ(Polaris)×勝井祐二|色とりどりの緑に囲まれた森のフェスと標高1,600mで行われる空のフェス

http://www.earth-garden.jp/festival/59437/

___勝井 その場を特別にするために僕たちアーティストが必要なことは、場所の空気や時間の流れをキャッチして、ライブをすること。そのためには、ある程度、時間が必要なんですよね。

___オオヤ 分かります。会場に入ってすぐライブだと、場所に体が追いつかないまま終わっちゃうような感じがします。
(中略)
___勝井 場をキャッチできていれば、よりお客さんに伝わるライブができると思う。今ここに必要な音楽はこれだよね、と自信をもって演奏できる。ソロはもちろん、バンドでやる時だって、本当は曲順や曲目は現地に行ってから決めたいですよね。

ーーー引用ここまで

 

この日アーティストたちの演奏から感じたものは、まさしくこの言葉に由来するものだったでしょう。見る人の想いとそれに呼応する音楽がゆったりと増幅しながらその空間を支配してしまう。そんな今日の二人の演奏を僕は忘れることができません。

しばしばフェスは“小さな都市”と例えられますが、このHLという共同体にゆったりと流れている“肌感覚”。それは二人のように、関わる人が思わず魅了されてしまう言語化できない力をもっているように思います。それは年を重ねる度丁寧に調律を整えながら、確かな概念として僕たちの生活における“指標”となっていくのでしょう。

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