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暗闇の中の灯火 〜コロナ禍における音楽の根源的役割〜 ハイライフ八ヶ岳2021に見たもの:開催レポート

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「ハイライフ八ヶ岳AIDラジオ」の波紋は八ヶ岳から各地へ広がりを見せています。今回配信を見届けてくれた一人として、長野県上田市で、場作りネットという社会活動をしてる元島生さんからライブレポートを届けていただきました。
とても柔らかく丁寧な視点で、私たちとハイライフ八ヶ岳の今をすくい上げてくれるような文章です。ぜひ。

 

開催レポート:ハイライフ八ヶ岳AIDラジオ
「暗闇の中の灯火 〜コロナ禍における音楽の根源的役割〜 ハイライフ八ヶ岳2021に見たもの」

執筆■元島生 photo■平林岳志

■葛藤の末に
コロナ禍における安全なフェス開催の実績を打ち立て、日本の音楽業界に希望を与えたハイライフ2020から1年。スタッフたちは、開催予定日ギリギリまで、悩んでいた。一般から広く意見を募集し、地元の人たちとの率直な話し合いを重ねながら、本当に今、大切にしなくてはならないことは何なのか、それを真剣に考えていた。その真摯な葛藤は、このフェスに関わりのなかった私のところにまで、まっすぐに届いていた。その「向き合い方」に心を動かされ、私はフェスへの参加と、レポート執筆を申し出て、今、これを書いている。
8月27日、スタッフたちが、多くの人たちと共に出した結論は「来年への開催延期」であった。

■ドタバタから生まれるもの
ライブ配信での開催となった9月11日。その前日にプロデューサーの南兵衛氏から「レポートの執筆をお願いしたい」とメールが入った。開催延期決定から実質10日で、開催までこぎつけた配信ライブ。そのドタバタ。しかし、だからこそのエネルギー。私もそれに引き寄せられ力が沸く。決まっていた予定を動かす。しかしそれは、決してネガティブなものではない。むしろ、その動きによって、私の中にエネルギーが沸き、自分の人生を、主体的に動かすことができるものだ。
今回の配信ライブや、そこに至るまでの一連の動きを通して、私が見たものは、そうした人生をも動かすことが出来る「見えないも」のの姿だったように思う。エネルギーと言うべきか、縁とでも言うべきか、とにかくそれは見えないものだ。
トークでは、スタッフ達から何度もそうした見えないものを掴もうとする意志を感じたし、アーティスト達はみな、この場に確かに存在している「何か」を、音によって形にし、私たちに見せようとしているかのようだった。

■不思議な森と演奏
配信の日、私は、配信会場となった八ヶ岳の麓女神の森セントラルガーデンからそう遠く離れていない車山高原のホテルに居た。八ヶ岳の森を見渡せるそのホテルから配信を見ていたことで、自然を通じて伝わるものがあったように思う。
オープニングのBun kalimbaさんによるカリンバの音は、八ヶ岳の森と繋がっているかのような音だった。縄文文化が栄えたこの土地は、不思議なエネルギーを携えている。まるで一匹の生き物であり、意思があるかのように動く。そのような不思議な土地に魅せられた人間の、土地との親和性とでも言おうか。9.11の追悼の願いを込めたネイティブアメリカンフルートもまた、山の中を風のように響き、八ヶ岳の山々を伝って、この部屋に届いているような気さえした。

続く、Michael kanekoの演奏もまた、八ヶ岳の森と共にあった。森から差し込む神々しい光の中を、音が泳いでいるようだった。配信チャットからは「目も耳も幸せ」というコメントが流れてきて頷いた。光りは一定ではなく、強くなったり、薄くなったりしながら動いていた。そしてそれに呼応するように音楽は進んだ。

ermhoiの演奏の時には、森は薄暗くなっていた。動いていた光や影は無くなり、静かになった。森の低いところをから静かに流れてくるようなエレクトリックな音に乗って、気流の様な澄んだ声が登っていく、いくらでも上空へ上がった。上空を見上げ、目を瞑りながら演奏するermhoiは、この空気の中にある音を探しているようだった。

奇妙礼太郎が登場する頃には、森は夜に入ろうとしていた。ギター一本を使い、身体全身で鳴っているかのような歌は、夜の森に佇む勇気を持とうとしているようでもあった。言葉を使いながらも、それは言葉を超えた何かと共振しているようであり、夜を迎い入れる力強さを感じた。

ラストを飾ったオオヤユウスケ×勝井祐二の演奏の頃には、森は闇に包まれていた。夜の闇の中で焚火を眺めているような時間だった。優しく鳴るギター、夢の中のようなバイオリン、眠りを誘うような包み込む歌。「天からの贈り物」「忘れてしまう前に」その歌詞は今日一日が何だったのかを歌っているようだった。いつもいつも間違ってしまう私たちが、暗闇の中、悪夢に迷い込まないように、火をくべ続けてくれるような演奏だった。

そうした夢のような余韻の中、今年のハイライフ八ヶ岳2021配信AIDラジオは幕を閉じたのだった。

■音楽の根源的な願い
縁というものは、きっと、あるエネルギーだと思う。それは不思議な力だ。人間は古来から「自然」という地球を回しているシステムや、そのシステムを支える不思議なエネルギーに従って生きてきた。従うとともに、自分たちもまた地球を回すエネルギーの一部だった。しかし、現代、人間はそのシステムからはがれ落ちてしまった。自分を運んでくれるシステムから逸れてしまった人間は、それでも自分たちを運ぶ何かを探しており、それを社会というシステムで代替えしてきたのだと思う。しかし、それはやはり偽物なのだ。
偽物の世界に、日々、身をゆだねながら、私たちはいつも探している。私たちを正しく導いてくれる本当のエネルギーがどこかにあるはずだと。それを見たいし、感じたいと思っている。その根源的願いが、今も音楽にはあるのではないかと思う。
今回のアーティストはみな、あるエネルギーを音楽によって掴み、形にし、見せてくれたように思うし、そうした願いを秘めていたように思う。

■今、必要なこと
コロナ禍といわれる社会的混乱の中、開催を延期したハイライフ八ヶ岳2021であったが、好き勝手なことを言わせてもらえば、私は、今回それでよかったと思っている。もし開催ができたとして、その時、私たちは何を得ていただろうか。「大変だったね」と台風一過、コロナ以前の社会の在り方に戻ろうとしたのではないだろうか。
しかし、今、私たちに必要なのは、そのような在り方ではない。
私たちは、今、この困難からこそ、大事なものをつかみ取らなくてはならない。この苦難にまっすぐに向き合い、勇気をもって暗闇に佇まなくてはならない。その暗闇の時間を、我々人間が今、必要としており、ハイライフはその暗闇に勇気をもって佇む選択をしたのだと思うからだ。

■ハイライフの役割
コロナはある意味自然なものだ。それは私たちの一部である。それを恐れる私たちの心にこそ、本当の病はある。社会というシステムを脅かす存在を、我々は脅威として恐れているが、本当に恐れるべきなのは、社会というシステムに依存しなければ生きられなくなっているという事実なのではないだろうか。
ハイライフの抱える葛藤は、それゆえに生まれた葛藤だったのではないかと思う。ただ音楽イントやって楽しめばいいという次元では、絶対に生まれない葛藤をハイライフは抱えている。そしてその葛藤を、「みんなで考える」という新しいエネルギーによって超えようとしている。
音楽という古来から人間が自然と繋がってきた方法を、真ん中に置きながら、この苦難を超えるためのエネルギーを、探し、生み出し続ける。
そういう役割をこそ、このイベントは担っている。私は今回そう確信した。
それは、まさに、暗闇の中の灯火である。
「夜明け前が一番暗い」南兵衛氏の言葉が耳に残っている。勇気をもって暗闇の中に佇むことを選択したこのイベントを、私は応援したいし、共に佇もうと思い、これを書いている。
灯火に火をくべるような音楽があれば、私たちはまた、これまでと違う夜明けを迎えることができるはずだ。

執筆■元島生
長野県上田市で、場作りネットというNPOを運営しています。
電話やSNSによる相談支援を行いながら、一泊500円で泊まれる「やどかりハウス」。無料で食べられる「のきしたおふるまい」。お金ではなく時間を通過に繋がる「時間銀行」など、社会の雨風をしのぐ場作り「のきした」に取り組んでいます。
□note https://note.com/motoshima/
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□NPO法人場作りネット
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